巻物を必死に切る若手寿司職人と、その出来栄えを苦々しく見つめる先輩寿司職人

『す・・すみません』『 すみません・・すみません・・・・』

将太の寿司では、悪意の塊のような敵キャラ、浮世離れした聖人キャラだけでなく、無能な味方キャラも躍動する。

ゼークトの組織論で言えば、間違いなく無能な働き者(愚鈍・勤勉)に分類される「シンコ君」。

彼が何度も鳳寿司の名声を落としかねない失態を繰り返すことで、主人公である将太の天才ぶりが引き立つ構図となっている。

シンコ君概要

将太の兄弟子で、本名は小畑慎吾。

鳳寿司の追い回しとして、将太より半年ほど前から勤務している。

真面目ではあるのだが、その冴えない働きぶりと大人しめの性格が相まって、佐治安人からは日常的にパワハラを受けていた様子である。

鳳寿司に入ってきた将太に対しては友好的に接するが、さらに後で入ってくる飛男に対しては先輩風を吹かしているので、しっかり人を選んで態度を変えている節がある。

職人としては、腕も知識も将太には大きく劣っている上、問題行為・発言も多く度々騒動を起こしている。

問題を起こすたびに鳳寿司を辞めようとする逃げ癖も目立っており、一時は工事現場で働いていたこともあった。

将太を煽るシンコ君

『どうするつもりなんだい 将太君・・・!!』

自分のことは棚に上げ、将太がピンチになると上記のセリフで無駄にプレッシャーをかけてくる。

そして、問題の殆どは将太が自力で問題を解決するため、基本的にシンコ君は何の役にも立っていない。

そればかりか、初めてツケ場に立つ将太に整髪料をつけるよう勧め、デビュー戦を散々な結果にしたりと足を引っ張ることも(悪気がないのがたちが悪い)。

将太のアイデアがイマイチなときは「これはダメだよ 将太君…!!」と否定するのだが、お前が言うなという感じである。

巻き物も満足に切れないシンコ君

ある時、兄弟子の小政がシンコ君に仕事を任せてみようとカンピョウ巻きを切らせてみると、とんでもない出来となったことがある。

本人は滅茶苦茶真剣に切っているのに、海苔は断面がボロボロになるほど破れ、酢飯はまな板の上に散乱する有様。

一体どうやったらここまで失敗できるんだ?という代物で、その辺の幼稚園児の方がよっぽどうまく切れるというレベルである(別の回では、綺麗に巻き物を切る小学生も出てくる)。

その惨憺たる出来栄えに失望した小政からは「このヘンなもの片付けろ!」と、まな板の上の巻物の残骸を手で払われてしまう。

その残骸がシンコ君の顔面に直撃するのだが、この小政も相当なパワハラ体質であることが伺える。

その様子を将太と比較して佐治になじられるのだが、シンコ君はいじけた様子で「才能が違いますよ」と捨て台詞を吐くのである。

寿司屋に勤めて1年も経過するのに、「いったい今まで何の修行をしてきたんだよ」と小政が言うのはもっともである。

なお、巻き物を切っていたのは思いっきりツケ場だったようだが、目の前でこんな寸劇を見せられたカウンターの客は、(そういうのは、裏の見えないところでやってくれよ・・・)と、さぞ気分が悪かったであろう。

その後、シンコ君は落胆のあまり、行方をくらまし工事現場で働き始めるも、寿司への想いは断ち切れなかったようで、飯場の職人たちに巻き寿司を振る舞うこともあった。

現場で皆に巻き寿司を配り「どうですか?おいしいですか?」と聞いて回る姿に、「この新人、ヤバい奴かな?」と思った職人もいたのではないだろうか。

新人寿司職人コンクールの成績

こんなシンコ君だが、将太の次の年の新人寿司職人コンクールには、何と鳳寿司代表(消去法)として出場している。
※将太のときは佐治安人と熾烈な出場枠争いを繰り広げた

だが、ここで何と1回戦を勝ち進むという奇跡を起こすのである(親方からの嫌がらせ難題にも応える)。

将太の年は、新人寿司職人コンクールと謳っておきながらこの道10数年のベテランが出てきたり、店を持っている職人が出てきたり、伝説の寿司職人が出現したので、今後はそういう輩が出てこないようレギュレーションでも変わったのだろうか?

しかし、将太が全国大会で戦う最中、シンコ君はひっそりと2回戦敗退。

作者も、巻き寿司がまともに切れないシンコ君が勝ち進むのは流石に不自然だと思ったに違いない。

それにしても、前年の大会が終わらないうちに次の年の予選大会が進むとは、やたら回転の早い大会である。

何しろ、単なるお題発表だけを行う日ですら会場に多数の観客が湧いて出てきて、別に盛り上がるシーンでもないのにワーワーと歓声を上げるほどなので、寿司職人コンクールは甲子園以上のキラーコンテンツなのだろう。

シンコ君の最期

そんな良いところが無い上に失敗を繰り返すシンコ君だったが、最終回では鳳寿司の親方となった佐治(絶対味覚取得バージョン)のもと、普通にツケ場に立って寿司を提供している。

元親方からも、その上達ぶりを褒められるほど。

シンコ君もようやく努力が花開いたようだが、よく散々いびられ続けた佐治の元で働けるものだと思ったものである。

小政や佐治という環境下で、(たまに行方をくらましながらも)修業を勤め上げただけあって、忍耐力はかなり鍛え上げられているのだろう。

また、将太の寿司の世界では、危うく殺されかけた相手に対しても笑顔で寿司を勧める、将太の父親のような狂人がいるので、この程度の寛大な気持ちは全く珍しくないのかもしれない。

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