「しまった」とリアクションする新人寿司職人

『あ・・・・』『 僕は・・・・馬鹿だ!!』

『将太の寿司』は、手っ取り早くライバルとの寿司バトルという舞台を演出するためか、物語の大半を「新人寿司職人コンクール」なる大会に費やしており、主人公・関口将太が、数多の畜生ライバル達と寿司対決を繰り広げる展開となっている。

ライバルたちは、純粋に職人としての腕で勝負するだけならまだしも、市場の食材を買い占めたり、審査員に賄賂を渡していたり、将太にダイレクトアタックを仕掛けてきたりと、様々な妨害行為を繰り出してくるのだが、将太はそれを常軌を逸した努力で跳ねのけていくのである。

ここでは、そんな努力の天才、将太の活躍ぶりに注目してみたい。

将太来歴

将太は、北海道・小樽の寿司屋「巴寿司」の息子として生まれる。

巨大チェーン店「笹寿司」の営業妨害により家族は被害を被り、母親の死、自暴自棄になった父親と、かなり過酷な家庭環境を送っていた。

そんな笹寿司に対抗するべく、大怪我を負った父親に代わり将太は地元の「寿司握りコンテスト」に出場する。

勝負は笹寿司に負けてしまうものの、その仕事ぶりが審査員の1人であった東京の名店「鳳寿司」の親方の目に留まり、親方のスカウトを受けて鳳寿司での修行を開始する。

若さゆえの未熟さもあるが、凄まじい努力と才能を武器に、新人寿司職人コンクールの頂点まで駆け上っていく。

努力という名の才能

鳳寿司での修行や新人寿司職人コンクールでは、幾度となく寿司の難問にぶち当たることとなる。

しかし、その度に将太は数日間の徹夜で研究を重ね、しかも徹夜によって大体の職人技は身につけるというインチキ能力を発揮するのである。

例えば、鳳寿司では佐治からの嫌がらせにより、米の炊き方、酢飯の作り方、玉子焼きの焼き方といった寿司屋の基本を教えてもらえなかったにも関わらず、シンコ君が見守る中(シンコ君は先輩なのに当然のように基本を知らない)、次々と独自にそれらを習得していく。

それ位、料理本とかに載っているんじゃ・・・とか思ってはいけない。

全て、将太の努力の成せる業である。

更には、将太の「努力」という名のチート能力によって、以下のような離れ業をやってのけている。

  • 左手を潰されても、右手だけで「スパーン」と寿司を握る(小手返し一手とかいう技)
  • 「幻のタコの桜煮」「数十年前ブラジルで一度食べただけの美味しい寿司」「漁師すら知らない黒いクジラ肉の寿司」などの寿司を完璧に再現
  • あまりの寿司の美味さに、審査員が鼻水を垂らして号泣したり、踊りだしたり、寿司食べたさのあまり争ったりしてしまう
  • 巨大な本マグロの表面を指でなぞるだけで、数ミリしか取れない超希少部位を探し当てる

連日の深夜に及ぶ研究をしつつ、鳳寿司の業務もこなせるのは、若さ故か。

しかし、包丁技の練習をしていたときは、布団の上で大の字になって息を切らせていたりと、謎の疲労を見せていたりする場面も。

因みに、シンコ君は将太の研究の様子を横で見ているだけで、一緒に修業することは無い(そういうところやぞ)。

ウナギ駅弁の狂気

特に将太の習得力が際立った回がこちらである。

どの審査員が考えたのか知らないが、コンクールの全国大会で「明日までに200人分の駅弁準備して。審査員は乗客な。」とかいう無茶振りテーマが与えられる。

このテーマに対し、将太はウナギ弁当を出そうと考えるのだが、将太はそれまでウナギを扱ったことが無かった。

じゃあ何でウナギ弁当にしようとするんだよ!という突っ込みは無しでお願いしたい。

しかし、どういう伝手があったのか知らないが、将太は謎のウナギ職人に教えを請い、一晩ででウナギの捌き方・焼き方含む蒲焼きの全工程をマスターしてしまう。

かつ、技術の習得早々、明け方から200人分のウナギ弁当を用意するという滅茶苦茶なことをやり遂げてしまう。

将太自身も、ご丁寧に「俗に“串打ち3年 割きが5年に焼きが一生”と呼ばれる難しい技術」「その全ての技術をたった1日で覚えなければならなかった」と説明している。

「弁当にするためにこれだけの時間がかかってしまったんだ」と悔しそうに話していたが、謙遜にも程がある。

なお、そのウナギ弁当を食べる女子高生たちがやたら的確に味の分析をする点も見逃せない。

あ・・・!!僕は馬鹿だ!!

とはいえ、将太も完全無欠というわけではなく、基本を忘れて足元をすくわれたり、考えが足りずにライバルに敗北を喫する場面もそこそこある。

新人寿司職人コンクールで敵から「お前の寿司はここが足りない」と指摘されると、毎回判を押したように「あ・・・!!」としまった感を出す。

あまりに同じ反応を繰り返すので、将太が「あ‥‥」と反応するコマだけの狂気の神経衰弱が販売されるほどである。

間違える度に「僕は馬鹿だ・・・!!」とリアクションするのが正しい遊び方だろうか。

悪役たちを続々浄化させる

そんな将太のひたむきな向上心と諦めない心は皆の心を打つらしく、佐治安人、紺屋碧悟をはじめとするクソ寿司職人を次々と改心させるという少年誌さながらの主人公属性を備えている。

しかも、最終回では自分の家庭を滅茶苦茶にした笹木剛志まで「綺麗なジャイアン化」させ、親子共々これまでの所業を許してしまうという感動的な場面も。

そして新人寿司職人コンクールの全国大会で優勝を飾った後は、鳳寿司での修行を終え、巴寿司で父親とともにお店を盛り上げていき、彼女とも身を固め、子宝にも恵まれ・・・と、大団円を迎えることとなる。

鳳寿司の跡取り問題も解決し、先輩たちも無事独立して自分の店を持ち、ついでにシンコ君も職人として花開き、これまでの不幸フラグを悉く回収していく様は、正に少年漫画の終わりとして遺恨を残さない綺麗な終わり方である。

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