漫画『美味しんぼ』栗田ゆう子レビュー

『おむすび、どうですか?』 このセリフは、栗田さんが山岡に自作のおむすびを勧める際の一言である(しかも、一度山岡から低評価を下された後日のやり取り)。 料理漫画『美味しんぼ』の主人公・山岡士郎のパートナーとして長年物語を支え続けてきた栗田さんは、初期こそ愛らしいセリフを発していたのだが、この人物も山岡や雄山と同様、変貌を遂げていく。 栗田さん概要 本名は「栗田ゆう子」(どうでも良いが、この漫画の女性の名前は「◯◯子」が非常に多い)。 美味しんぼの初回、東西新聞社 文化部の新入社員として颯爽と登場。 入社した年に東西新聞社における創立100周年の記念事業として「究極のメニュー」作りの企画が立案される。 栗田さんはその味覚の鋭さを買われ、山岡と共に究極のメニュー作りに励んでいくこととなる。 山岡に比べると食の知識ははるかに劣っていたものの、味に関する判断は確かであり、要所で独自の観点から山岡のメニュー作りををサポートしていく。 物語の終盤には山岡と結婚し、子宝にも恵まれている。 栗田さんの独特すぎる食レポ 美味しんぼでは饒舌に料理の感想を始めるキャラが多いが、栗田さんも例外ではない。 しかし、どちらかと言うと、以下のように若干独特な擬音で美味しさを表現する傾向がある。 ベトナム風春巻き:「複雑で深味のある香りのタペストリーの上に、さわやかなハッカの香りがたなびいて!」 牡蠣とヒラメのホワイトソース鍋:「ヒラメがシャッキリポンと、舌の上で踊るわ!」 タコの刺身:「シャッキリシコシコ、気持ちのよい歯ざわり。」 餃子:「皮はシャッキリシコシコ⋯⋯かむとおいしいおツユがピュッ⋯⋯」 カリフラワーのグラタン:「なんだか不潔な雑巾のような匂い・・・」 シャッキリはまだしも、「ポン」て。 かの最高峰B級映画として名高い『コマンドー』の悪役、ベネットの名ゼリフ 『10万ドルポンッとくれたぜ』 にも匹敵するポンである。 雄山も後に「ポン酢の"ポン"とは何のことだ。」とか謎掛けをしていたりと、なぜか美味しんぼはたまに「ポン」にフィーチャーするようである。 まあ、他のキャラも「しゃっきり、ぴろぴろ」「うももも」「ぬおおおーー!」「ダイナマイト――!」とか言ってるので、栗田さんの食レポもそこまで悪目立ちはしていない範囲ではある。 結婚相手に山岡を選択 作中、栗田さんはIT企業の創設者である団社長や、売れっ子カメラマンである近城に好意を抱かれており、結婚まで申し込まれたにも関わらず、最終的にはグータラ社員の山岡を伴侶にしている。 これだけ見ると、まるで栗田さんが聖母のように見えるが、別にそんなことは無い。 何だかんだ山岡は大企業の正社員であり、社主はじめとする経営層や、社外の大物たちとも強固なコネクションを持っている。 その上、義父は銀座に大料亭を構える稀代の美術家。 将来目線で見れば、山岡を選んでも結局は玉の輿に乗っているという構図となる。 雄山信者へと変異 最初こそ山岡の味方であったが?雄山が聖人モードへアップデートする度に雄山に傾倒していく。 そして、新入社員時代の初々しさはどこへやら、顔の輪郭が四角くなり、貫禄が出てくるのである。 最終的には、「海原先生の素晴らしさを理解できない山岡の方がおかしい」という領域にまで達するのだから、さながら雄山教へ入信した信者のようである。 雄山の莫大な遺産が山岡家転がり込むことを思うと、何としても和解させたくなる気持ちも分からなくは無いが。 また、栗田母はこれに輪をかけた徹底ぶりであり、たびたび山岡を糾弾する嫌な絵面が見られる。 栗田さんまとめ このように、栗田さんはかなり振れ幅の大きいキャラクターであることが分かる。 料理の素人として謎の食レポを繰り出し、たまに毒を吐く位であれば愛嬌があったが、山岡と結婚した後は、もはや見る陰もない。 せめて連載終了までに、何でも良いから食べたときにもう一度シャッキリポンと言って欲しかったが、残念ながらそれも叶わなかった。

漫画『美味しんぼ』京極万太郎レビュー

『山岡さんの鮎はカスや。』 美味しんぼの良心のようなポジションに収まりつつも、唐突に上記の心無いセリフを吐くことで強烈なインパクトを残した京極さんを紹介したい。 京極さん概要 京極万太郎(美味しんぼでは「京極さん」と呼ばれることが多い)は高知県四万十出身の商人であり、億万長者。 山岡とは、東西新聞社にルノワールを貸し出そうとした件からの付き合いである。 初対面のときは、山岡から「ケツの穴の小さいじいさん」呼ばわりされ、激高するという最悪の出会いとなってしまう。 しかし、その後は食を通じて心が通じ合い、以降は山岡の良き理解者として美味しんぼを盛り上げるキャラクターとなる。 作中では、いち早く山岡を「海原雄山の息子」と看過した人物でもある。 京極さんの味覚が鋭すぎ 京極さんは究極のメニュー対至高のメニューの審査委員の一人を務めているだけあって、鋭敏な味覚の持ち主である。 しかし、その精度がずば抜けており、 白米を一口味わうだけで産地から品種まで当ててしまう 豆腐の味噌汁を味わうと、味噌、カツオ節、豆腐の素性を分析 イワシの丸干しにかぶりつき、土佐の丸干しであることを判別 鮎の天ぷらを食べて、四万十川で採れた鮎であることに気付く 刺身を食べると、紙塩をしたことはおろか、使われていた和紙が自分の生まれ故郷である楮の香りだと見破ってしまう 米相場で財をなしたことから食に精通しているとはいえ、味覚の鋭さは雄山や山岡にも全く引けを取らないのではないだろうか。 山岡の鮎カス事件 変人がひしめく美味しんぼでは常識人寄りの京極さんだが、たまに乱心することもあり、鮎の天ぷらが最たるものである。 あるとき、山岡と雄山が競って京極さんに最高の鮎の天ぷらを提供するというエピソードがあった。 先攻は山岡の鮎で、皆の反応も上々。 しかし、残念ながら先行山岡は大体負けフラグである。 ※雄山の場合はこの限りではない 京極さんは雄山の天ぷらを口にすると、これまでの態度を豹変させる。 鮎を口に咥えつつ、涙腺を崩壊させながら、京極さんの口からはかの有名なセリフが飛び出す。 『なんちゅうもんを食わせてくれたんや…なんちゅうもんを…』 『これに比べると山岡さんの鮎はカスや。』 なんか勝手にスイッチが入って号泣&カス発言をする姿に、山岡たちは驚きを隠せない。 将太の寿司の審査官たちなら、旨い寿司を食べて号泣するリアクションは日常茶飯事なのだが、美味しんぼではそこまでではない。 しかし、ご馳走になる身分でありながら、京極さん言い過ぎじゃないか、とは誰もが思うところである。 そして雄山が山岡を罵っている間、山岡は悔しがり、周りが固唾を飲む最中、京極さんは空気を読まずに一人鮎の天ぷらに舌鼓を打つ有様である。 アニメ版では山岡の鮎はカスではない 「この回の京極さんは人でなし」という批評が多かったのか、アニメ版京極さんは大分マイルドになっており、「山岡はんのとは比べ物にならん」という言い回しに代わっているほか、「山岡はんの鮎も十分うまかったですよ。すまんことでした、折角ご馳走してもろたんに。」とナイスなフォローが入っている。 またアニメ版でも号泣するが、原作と異なり鼻水までは流していないという微妙な違いもある。 京極さんのキャラ的にはアニメ版の方がよりしっくりくる展開ではあるが、鮎カスのインパクトは得られなかったであろう。 京極さんまとめ 以上のように、たまに荒ぶることはあれど、山岡達を陰ながらサポートする準レギュラーキャラである。 なお、裏情報を集めるのはお手の物のようで、東西新聞社の危機が生じたときも電話一本で重要な情報を入手したりと、決してただの善人でもなく、何かと話に絡めやすい便利な金持ちキャラとして美味しんぼを盛り上げてくれる。

漫画『美味しんぼ』ラーメン戦争に出てくる人たちレビュー

『ラーメンは地球を救う!』 美味しんぼは100巻を超えるので様々なエピソードがあるが、中でも38巻で1巻まるごと収録されている「ラーメン戦争」の回は、個性的な登場人物がひしめく、なかなかインパクトのある回に仕上がっている。 ストーリーの概要 山岡士郎は、荒川夫妻から知り合い(橋田)の経営する流行らないラーメン店の手助けを頼まれる。 山岡は橋田に回りくどくラーメンの味のダメ出しをするため、美味いと評判のラーメンチェーン「流星一番亭」の屋台に橋田たちを連れて行く。 その流星一番亭は確かに味は良いのだが、屋台を構えて近くのラーメン屋から客を奪い、最終的にそのラーメン屋を傘下に入れることで成長するという強引な手口を行っていた。 そんな流星一番亭に目を付けられているラーメン屋「金銀軒」の女性店主に、橋田が一目惚れする。 橋田の熱い要望を受けた山岡たちは、金銀軒を救うべく、流星一番亭に負けないラーメンを作ることとなる。 濃い登場人物たち 美味しんぼは、海原雄山や富井副部長といった危険人物がレギュラーを張っているが、このラーメン戦争は様々な怪人たちが登場する豪華な回となっている。 雉川盛一 大人気のラーメン店「流星一番亭」を展開する企業、『流星組』の組長(組長と言うと物騒だが、要するに社長)。 元はアメリカのハンバーガーチェーンで成功を収めていた人物だが、紆余曲折あって自分の好きなラーメンで事業を立ち上げた。 ラーメン店を傘下に収める手口は強引だが、味で勝負しているので某漫画『S太の寿司』の「笹寿司」に比べれば、遥かに健全な経営である。 漫画『将太の寿司』笹木剛志レビュー 『てめえの一生を・・・・滅茶滅茶にしてやるぜ 関口・・・・!!』 将太の寿司では寿司という平和そうなテーマを扱っているにも関わらず、どうい... 店舗の味をチェックしに来た際は、割り箸を口にくわえてカッコよく割ったり、大股開きの立ち姿勢で試食をする身のこなしを、何だか良く分からないが橋田に「見事です」と評されている。 そして試食したラーメンの麺に異変を感じ、部下に麺の日付を確認させると、明日出すべき麺を1日早く提供していたことが判明する。 すると、大勢の客がいる店内にも関わらず、大声で「●んでしまえーー!」と叱責する。 こういうの見せられると飯が不味くなるので個人的には凄く嫌なのだが、そこは流石やり手の経営者。 客たちに深くお詫びするとともに、その日客が食べたラーメン代を無料にするという大盤振る舞いを行うことで、客たちの信頼を獲得する(もしかしてやらせ?)。 というわけで、大勢の客の前で暴言を吐く雄山的な側面はあるものの、職人気質から来るものであれば全く理解できない訳ではなく、まだギリ許容範囲なキャラではある。 日本ラーメン総合開発研究所の所長 『ラーメンは地球を救う!』 挨拶代わりに上の台詞を大声で唱えたかと思うと、初対面の山岡たちにも唱和するよう強要するという、出だしからエキセントリックな人物。 研究所自体は新メニュー開発、ラーメン情報の配信など結構手広く活動しているようで、かのネット上で有名な「ラーメン三銃士」を召喚したのも彼である。 この男、参院選ではラーメン党でいくつか議席を取れると踏んでいるのだが、政見放送が放送事故にならないか心配である。 ラーメン三銃士 ネット上で、散々コラ画像の素材とされてきた面々である。 颯爽と3名の黒タンクトップが車から降りてきたかと思うと、所長が「ラーメン三銃士を連れてきたよ。」と紹介するのが初登場のシーン。 金銀軒の息子も、思わず「ラーメン三銃士?」と叫んでしまうが、至極真っ当なリアクションである。 そんな皆さんご存じの、感で紹介されても困るのである。 構成員は 麺の専門家(乃士勇造) スープの専門家(出川実) 具の専門家(多木康) と、無駄に専門分野が細分化されている。 というか、具の専門家とか必要か、これ。 この3名はネット上での印象が強すぎるが、残念ながら物語中では大して勝利に貢献していない。 麺の専門家、乃士は麺のコシやカン水の意義など専門理論を語るところまでは良かったのだが、カン水使用における悩みを吐露するも、山岡から「別に使わなくて良くない?」と簡単に説明されると、長年の問題をあっさり解決されてしまう。 麺の専門家なのに・・・。 そして出川のスープは差別化を狙いすぎて空回りし、結局味の決め手とはならず。 具担当の多木は最初こそ具の重要性を語ったものの、その後の描写も少なく、コラ画像でもオチ担当とネタキャラ扱いされてしまった。 ちなみに、『うどんの腰』という回でもパワー系の三銃士が結成されるが、そちらはお店の用心棒として活躍している。 念のためAIにもラーメン三銃士の活躍度を聞いてみたので、その辛辣な回答を引用して締めくくりたい。 ラーメン三銃士は登場時こそ大見得を切りますが、最後に勝利に貢献したわけではなく、実質「脇役で、説明要員」止まりです。 ご質問の「ラーメン三銃士は活躍したか?」については、知識面では多少理論を展開したものの、物語の勝利には直接関わらず、最後は空気化した存在と覚えておくと分かりやすいです。 うん、確かに分かりやすい。

漫画『クッキングパパ』東山常務レビュー

『うまいっ 荒岩くん』『 いやあいつ食っても最高だね』(荒岩の弁当を食べながら) 「クッキングパパ」は単行本の巻数も優に100巻を超え、200巻という大台も視野に捉え始めているという、何気にとんでもない長寿漫画である。 物語では緩やかに時間が経過する形式となっているのだが、あまりに連載が長期となっているため、主人公荒岩の息子(まこと)も小学生から社会人にまで成長してしまうほどである。 基本的には、会社の同僚たちが荒岩の手料理を食べ、「もっ最高!」する平和なストーリーなのだが、たびたび社内の付き合いが休日にも及んだりと、昭和さながらのウェットな社風が伺える。 その中で、当時リアルタイムで読んでいたとき、子供ながらに「こいつ、図々しいな…」と感じていた「東山常務」という人物がいる。 東山常務概要 主人公の荒岩が勤める「金丸産業」という商社の常務で、金丸産業随一のグルメを誇る。 漫画の中では仕事をしている場面はほぼ描かれず、荒岩の作った弁当を貪っていたり、役員室でゴルフのパターの練習をしているようなシーンばかり。 そもそも何で荒岩の弁当を食べているかというと、荒岩の弁当が美味そうなので、荒岩に頼み込んで弁当を召し上げているからである。 「は?」と思うのでもう少し説明すると、東山常務はグルメを極めたせいか、接待等で高級料理は食べ尽くしている一方で、荒岩の作る「家庭の味」には飢えており、そこで自身が出前で頼んだ有名店の天丼とかを弁当とトレードしてもらっているという事情がある。 それにしても、毎回部下の弁当を交換に来る常務が出てくる漫画なんて、クッキングパパくらいのものだろう。 役員室から出てきた東山常務が、弁当と交換するための天丼を廊下で運んでいる姿が、やたらシュールである。 突撃!荒岩家の昼ご飯 ある休日の昼下がり、荒岩の妻、虹子が身重の状態で一人キッチンで料理に励む。 荒岩たちは釣りに出かけているところ、虹子は妊娠中ということで留守番をしていた。 そこへ、突如東山常務がキッチンの小窓から顔を出す。 「ちょっと近くに来たもんで」と挨拶しているものの、要約すると「昼飯を食べさせてくれ」ということである。 荒岩も不在なのに、何と厚かましいことか。 虹子も突然の来訪に慌てるが、急拵えでそうめんの創作料理を作り、ビールとともに振る舞うことで、常務はご満悦。 漫画の絵柄はマイルドなので中和されているものの、字面に起こすと「ご相伴に預かるため、部下の妻(しかも妊娠中)だけがいる家に押しかける」という行為に及んでいることになる。これが商社の役員のやる事か! なお、そうめんの創作料理(いそぎんちゃん)は、海苔で巻いたそうめんを油で揚げ、上にイクラなどをトッピングしたもの。 表面はカリッ、中はぬにょっとした歯ごたえで、常務も絶賛。確かに美味そう。 その他活躍(職権乱用など) 上記のドン引き行為のほかにも、何かと理由を付けては食を求めるシーンが何度か見られる。 博多のパビリオンで特に必要も無さそうなのに会議に同席し、本格的な東南アジア料理を食べに来る。 荒岩と田中が韓国出張に行った後、常務が行く意味は無かったにも関わらず、韓国グルメを求めて無理やり理由を付けて自身も韓国へ飛ぶ。 新年最初の役員会の昼食の手配を頼まれた東山常務だったが、手違いで注文が通っていなかったことが判明し、電話越しにお店にガチギレする。 得意げに社長を連れて冷やし中華の名店に連れて行くが、店は臨時休業。その後も社長を連れ回すも、冷やし中華は食べれずじまい。 鯛の刺身に飽きていたとき、ふらりと入った居酒屋で鯛の刺身が出てきて「鯛はいらんのじゃー」とブチ切れる。 東山常務まとめ このように、残念ながら今のところ常務らしい有能さや、金丸産業一のグルメを活かした活躍は全く見られない。 というか、出てくる回は大体「最近何食べても美味しくないのー」からの「こんな時は荒岩君の奥さんのご飯じゃ」で、食事にありつこうとする意地汚いシーンである。 幸い2025年時点ではまだ連載中なので、今後何らかの形で会社で活躍することを願うばかりである(腐っても商社の常務なので)。

漫画『美味しんぼ』近城勇レビュー

『味噌と白菜と米の飯!日本人はなんてまずしいんだ!こんなものが、死ぬほどうまいんだからなーーっ!』 『美味しんぼ』には、山岡士郎や海原雄山、栗田ゆう子といった主要メンバーに加えて、個性的な脇役が多数登場する。 中でもアクの強い海原雄山、富井副部長、中松警部などは初期から活躍するが、敢えてここでは中期から登場するカメラマン、「近城勇」に注目してみたい。 近城の記事なんて需要ないだろ!と言われると正にその通りなのだが、それでも書きたい。 山岡達との出会い 近城は、東西新聞繋がりの仕事をきっかけに山岡たちと知り合う。 最初はグルメブームには否定的だったので、食べ物を撮影するという山岡たちからの仕事の依頼も断っていた。 野生動物、遺跡、スポーツをする人とは違い、グルメごっこには真実がないし、うまい食い物の写真を撮ることが挑戦とも思えないから、というのが断りの理由であった。 しかし、栗田たちが飛騨高山で仕入れた朴葉味噌を食べると、その旨さから、白米をかっ込みながら「うおーっ」と吠える。 そして栗田から「食べ物は絵面が地味だけど、だったら感動するような写真撮ってみるのが挑戦だろ」と煽られ、最終的には山岡達の仕事を引き受けることとする。 敢え無くモブ化 当初はストイックで頑固な側面が強く、山岡たちをはじめとする周囲に対する当たりもキツかった。 仕事の勧誘をしようとした仁木まり子も、ひどく扱いにくい男だという噂を聞いて尻ごみするほど。 仕事を共にするようになった直後は、カジキマグロの話で帝都新聞と険悪になったり、辛子明太子がまずいと言い小泉局長と喧嘩をしたりと、血気盛んなところも随所に見られた。 (グルメ嫌いという割に、結構食べ物絡みで騒動を起こしているような…) しかし、次第に柔和な性格へと移行していき、山岡とは「山岡の旦那」と呼ぶほどの仲となる。 最終的には栗田の策略もあり、山岡と合同で結婚披露宴を催すのだが、宗教的な理由ではないので、そこは安心してもらいたい。 最初の一匹狼の雰囲気はどこへやら、気づいたら取材でも目立つ場面は少なくなり、究極&至高のメニュー対決のテーブルに賑やかしとして座っていたり、完全にモブキャラ化の波に飲まれていってしまうのである。 恋愛事情 美味しんぼでは、一応恋の話も描かれており、近城は山岡の当て馬として活躍する。 勧誘時の朴葉味噌作戦で籠絡してしまったのか、栗田に惚れてしまい、物語の途中までは団社長とともに栗田ゆう子を取り合うこととなる。 そして、近城は栗田が山岡のことを好きと知りながら、自分と栗田との仲を取り持つよう山岡に頼み込むという姑息な手段も行う。 ストイックで男臭い人じゃなかったのかな? 山岡は了承するが、その決断をしばらく後悔することとなる。 後半では栗田にプロポーズも行い、「僕と結婚してください」「邪魔するものは叩き潰す」「誰にも渡さないからね」と、聞きようによってはやや恐怖を感じる迫り方を魅せる。 一歩間違えばストーカー案件にもなりそうな言動だが、スピリッツの中では珍しく、子供にも安心して読ませられる漫画「美味しんぼ」でそういう展開は無いので、安心してもらいたい。 結局、栗田が近城になびくことは1回も無かった、と言うか全く歯牙にかけていなかった。 何気に海原雄山の専属カメラマン 仕事に対しては真摯で、例えばラグビーの試合の躍動感を写真に収めるべく、自身もフィールド外から選手を走って追いかけるほど。 また海原雄山のインタビュー時は、わざとしつこくフラッシュを焚いて撮影を続け、雄山が怒ったところで更に1枚写真を撮影。 これには、雄山の感情を剥き出しにした表情が撮るという意図があった。 一見失礼にも見えるやり方だが、雄山はその近城のプロ意識を気に入り、専属カメラマンに選んでいる。 と言うか、専属カメラマンを付けるとは、意外と雄山は写真写りを気にするタイプなのかもしれない。 美味しんぼの中では常識人寄り 登場時は「有能なカメラマンだが偏屈で扱いにくい男」という評判だったが、実は他の人ほど問題となる行動は起こしていなかったりする。 海原雄山とか富井副部長等と比べると、よっぽど常識人である(比べる対象が異常なだけかもしれない)。 仁木まり子との結婚後、離婚の危機があったりするが、富井副部長ほど突き抜けたエピソードでもない分、少し生々しい。 寧ろ、社会人的に終わっているのに家庭は奇跡的に円満な富井副部長の事例が特殊なのである。 ちなみに、美味しんぼにはもう一人のカメラマン、荒川も登場する。 こちらは一見いい人そうなのだが、カレーの作り方に妙なこだわりがあったり、サザエの調理法で奥さんと喧嘩したりと、こっちはこっちでクセの強めな人である。 ともあれ、プロカメラマンとして成功した上、二都銀行会長の孫の仁木まり子とも結婚し、子宝にも恵まれているので、かなり幸せになった人物の一人かと思う。

漫画『将太の寿司』関口将太レビュー

『あ・・・・』『 僕は・・・・馬鹿だ!!』 『将太の寿司』は、手っ取り早くライバルとの寿司バトルという舞台を演出するためか、物語の大半を「新人寿司職人コンクール」なる大会に費やしており、主人公・関口将太が、数多の畜生ライバル達と寿司対決を繰り広げる展開となっている。 ライバルたちは、純粋に職人としての腕で勝負するだけならまだしも、市場の食材を買い占めたり、審査員に賄賂を渡していたり、将太にダイレクトアタックを仕掛けてきたりと、様々な妨害行為を繰り出してくるのだが、将太はそれを常軌を逸した努力で跳ねのけていくのである。 ここでは、そんな努力の天才、将太の活躍ぶりに注目してみたい。 将太来歴 将太は、北海道・小樽の寿司屋「巴寿司」の息子として生まれる。 巨大チェーン店「笹寿司」の営業妨害により家族は被害を被り、母親の死、自暴自棄になった父親と、かなり過酷な家庭環境を送っていた。 そんな笹寿司に対抗するべく、大怪我を負った父親に代わり将太は地元の「寿司握りコンテスト」に出場する。 勝負は笹寿司に負けてしまうものの、その仕事ぶりが審査員の1人であった東京の名店「鳳寿司」の親方の目に留まり、親方のスカウトを受けて鳳寿司での修行を開始する。 若さゆえの未熟さもあるが、凄まじい努力と才能を武器に、新人寿司職人コンクールの頂点まで駆け上っていく。 努力という名の才能 鳳寿司での修行や新人寿司職人コンクールでは、幾度となく寿司の難問にぶち当たることとなる。 しかし、その度に将太は数日間の徹夜で研究を重ね、しかも徹夜によって大体の職人技は身につけるというインチキ能力を発揮するのである。 例えば、鳳寿司では佐治からの嫌がらせにより、米の炊き方、酢飯の作り方、玉子焼きの焼き方といった寿司屋の基本を教えてもらえなかったにも関わらず、シンコ君が見守る中(シンコ君は先輩なのに当然のように基本を知らない)、次々と独自にそれらを習得していく。 それ位、料理本とかに載っているんじゃ・・・とか思ってはいけない。 全て、将太の努力の成せる業である。 更には、将太の「努力」という名のチート能力によって、以下のような離れ業をやってのけている。 左手を潰されても、右手だけで「スパーン」と寿司を握る(小手返し一手とかいう技) 「幻のタコの桜煮」「数十年前ブラジルで一度食べただけの美味しい寿司」「漁師すら知らない黒いクジラ肉の寿司」などの寿司を完璧に再現 あまりの寿司の美味さに、審査員が鼻水を垂らして号泣したり、踊りだしたり、寿司食べたさのあまり争ったりしてしまう 巨大な本マグロの表面を指でなぞるだけで、数ミリしか取れない超希少部位を探し当てる 連日の深夜に及ぶ研究をしつつ、鳳寿司の業務もこなせるのは、若さ故か。 しかし、包丁技の練習をしていたときは、布団の上で大の字になって息を切らせていたりと、謎の疲労を見せていたりする場面も。 因みに、シンコ君は将太の研究の様子を横で見ているだけで、一緒に修業することは無い(そういうところやぞ)。 ウナギ駅弁の狂気 特に将太の習得力が際立った回がこちらである。 どの審査員が考えたのか知らないが、コンクールの全国大会で「明日までに200人分の駅弁準備して。審査員は乗客な。」とかいう無茶振りテーマが与えられる。 このテーマに対し、将太はウナギ弁当を出そうと考えるのだが、将太はそれまでウナギを扱ったことが無かった。 じゃあ何でウナギ弁当にしようとするんだよ!という突っ込みは無しでお願いしたい。 しかし、どういう伝手があったのか知らないが、将太は謎のウナギ職人に教えを請い、一晩ででウナギの捌き方・焼き方含む蒲焼きの全工程をマスターしてしまう。 かつ、技術の習得早々、明け方から200人分のウナギ弁当を用意するという滅茶苦茶なことをやり遂げてしまう。 将太自身も、ご丁寧に「俗に“串打ち3年 割きが5年に焼きが一生”と呼ばれる難しい技術」「その全ての技術をたった1日で覚えなければならなかった」と説明している。 「弁当にするためにこれだけの時間がかかってしまったんだ」と悔しそうに話していたが、謙遜にも程がある。 なお、そのウナギ弁当を食べる女子高生たちがやたら的確に味の分析をする点も見逃せない。 あ・・・!!僕は馬鹿だ!! とはいえ、将太も完全無欠というわけではなく、基本を忘れて足元をすくわれたり、考えが足りずにライバルに敗北を喫する場面もそこそこある。 新人寿司職人コンクールで敵から「お前の寿司はここが足りない」と指摘されると、毎回判を押したように「あ・・・!!」としまった感を出す。 あまりに同じ反応を繰り返すので、将太が「あ‥‥」と反応するコマだけの狂気の神経衰弱が販売されるほどである。 間違える度に「僕は馬鹿だ・・・!!」とリアクションするのが正しい遊び方だろうか。 悪役たちを続々浄化させる そんな将太のひたむきな向上心と諦めない心は皆の心を打つらしく、佐治安人、紺屋碧悟をはじめとするクソ寿司職人を次々と改心させるという少年誌さながらの主人公属性を備えている。 しかも、最終回では自分の家庭を滅茶苦茶にした笹木剛志まで「綺麗なジャイアン化」させ、親子共々これまでの所業を許してしまうという感動的な場面も。 そして新人寿司職人コンクールの全国大会で優勝を飾った後は、鳳寿司での修行を終え、巴寿司で父親とともにお店を盛り上げていき、彼女とも身を固め、子宝にも恵まれ・・・と、大団円を迎えることとなる。 鳳寿司の跡取り問題も解決し、先輩たちも無事独立して自分の店を持ち、ついでにシンコ君も職人として花開き、これまでの不幸フラグを悉く回収していく様は、正に少年漫画の終わりとして遺恨を残さない綺麗な終わり方である。

漫画『将太の寿司』シンコ君レビュー

『す・・すみません』『 すみません・・すみません・・・・』 将太の寿司では、悪意の塊のような敵キャラ、浮世離れした聖人キャラだけでなく、無能な味方キャラも躍動する。 ゼークトの組織論で言えば、間違いなく無能な働き者(愚鈍・勤勉)に分類される「シンコ君」。 彼が何度も鳳寿司の名声を落としかねない失態を繰り返すことで、主人公である将太の天才ぶりが引き立つ構図となっている。 シンコ君概要 将太の兄弟子で、本名は小畑慎吾。 鳳寿司の追い回しとして、将太より半年ほど前から勤務している。 真面目ではあるのだが、その冴えない働きぶりと大人しめの性格が相まって、佐治安人からは日常的にパワハラを受けていた様子である。 鳳寿司に入ってきた将太に対しては友好的に接するが、さらに後で入ってくる飛男に対しては先輩風を吹かしているので、しっかり人を選んで態度を変えている節がある。 職人としては、腕も知識も将太には大きく劣っている上、問題行為・発言も多く度々騒動を起こしている。 問題を起こすたびに鳳寿司を辞めようとする逃げ癖も目立っており、一時は工事現場で働いていたこともあった。 将太を煽るシンコ君 『どうするつもりなんだい 将太君・・・!!』 自分のことは棚に上げ、将太がピンチになると上記のセリフで無駄にプレッシャーをかけてくる。 そして、問題の殆どは将太が自力で問題を解決するため、基本的にシンコ君は何の役にも立っていない。 そればかりか、初めてツケ場に立つ将太に整髪料をつけるよう勧め、デビュー戦を散々な結果にしたりと足を引っ張ることも(悪気がないのがたちが悪い)。 将太のアイデアがイマイチなときは「これはダメだよ 将太君…!!」と否定するのだが、お前が言うなという感じである。 巻き物も満足に切れないシンコ君 ある時、兄弟子の小政がシンコ君に仕事を任せてみようとカンピョウ巻きを切らせてみると、とんでもない出来となったことがある。 本人は滅茶苦茶真剣に切っているのに、海苔は断面がボロボロになるほど破れ、酢飯はまな板の上に散乱する有様。 一体どうやったらここまで失敗できるんだ?という代物で、その辺の幼稚園児の方がよっぽどうまく切れるというレベルである(別の回では、綺麗に巻き物を切る小学生も出てくる)。 その惨憺たる出来栄えに失望した小政からは「このヘンなもの片付けろ!」と、まな板の上の巻物の残骸を手で払われてしまう。 その残骸がシンコ君の顔面に直撃するのだが、この小政も相当なパワハラ体質であることが伺える。 その様子を将太と比較して佐治になじられるのだが、シンコ君はいじけた様子で「才能が違いますよ」と捨て台詞を吐くのである。 寿司屋に勤めて1年も経過するのに、「いったい今まで何の修行をしてきたんだよ」と小政が言うのはもっともである。 なお、巻き物を切っていたのは思いっきりツケ場だったようだが、目の前でこんな寸劇を見せられたカウンターの客は、(そういうのは、裏の見えないところでやってくれよ・・・)と、さぞ気分が悪かったであろう。 その後、シンコ君は落胆のあまり、行方をくらまし工事現場で働き始めるも、寿司への想いは断ち切れなかったようで、飯場の職人たちに巻き寿司を振る舞うこともあった。 現場で皆に巻き寿司を配り「どうですか?おいしいですか?」と聞いて回る姿に、「この新人、ヤバい奴かな?」と思った職人もいたのではないだろうか。 新人寿司職人コンクールの成績 こんなシンコ君だが、将太の次の年の新人寿司職人コンクールには、何と鳳寿司代表(消去法)として出場している。 ※将太のときは佐治安人と熾烈な出場枠争いを繰り広げた だが、ここで何と1回戦を勝ち進むという奇跡を起こすのである(親方からの嫌がらせ難題にも応える)。 将太の年は、新人寿司職人コンクールと謳っておきながらこの道10数年のベテランが出てきたり、店を持っている職人が出てきたり、伝説の寿司職人が出現したので、今後はそういう輩が出てこないようレギュレーションでも変わったのだろうか? しかし、将太が全国大会で戦う最中、シンコ君はひっそりと2回戦敗退。 作者も、巻き寿司がまともに切れないシンコ君が勝ち進むのは流石に不自然だと思ったに違いない。 それにしても、前年の大会が終わらないうちに次の年の予選大会が進むとは、やたら回転の早い大会である。 何しろ、単なるお題発表だけを行う日ですら会場に多数の観客が湧いて出てきて、別に盛り上がるシーンでもないのにワーワーと歓声を上げるほどなので、寿司職人コンクールは甲子園以上のキラーコンテンツなのだろう。 シンコ君の最期 そんな良いところが無い上に失敗を繰り返すシンコ君だったが、最終回では鳳寿司の親方となった佐治(絶対味覚取得バージョン)のもと、普通にツケ場に立って寿司を提供している。 元親方からも、その上達ぶりを褒められるほど。 シンコ君もようやく努力が花開いたようだが、よく散々いびられ続けた佐治の元で働けるものだと思ったものである。 小政や佐治という環境下で、(たまに行方をくらましながらも)修業を勤め上げただけあって、忍耐力はかなり鍛え上げられているのだろう。 また、将太の寿司の世界では、危うく殺されかけた相手に対しても笑顔で寿司を勧める、将太の父親のような狂人がいるので、この程度の寛大な気持ちは全く珍しくないのかもしれない。

漫画『将太の寿司』笹木剛志レビュー

『てめえの一生を・・・・滅茶滅茶にしてやるぜ 関口・・・・!!』 将太の寿司では寿司という平和そうなテーマを扱っているにも関わらず、どういうわけか何人も極悪人が湧いて出てくる。 中でも代表的な悪役としては、以下の3名が挙げられるかと思う。 笹木剛志 佐治安人 紺屋碧悟 下2人は既にレビュー済みであり、笹木だけレビュー無しというのも可哀そうなので、冒頭の物騒なセリフを吐いている笹木についても触れてやろうかと思う。 笹木概要 主人公、将太の高校時代の同級生であり、北海道屈指の寿司チェーン「笹寿司」の御曹司。 将太の実家である「巴寿司」を買収しようと様々な工作をした結果、(間接的とはいえ)気苦労から生じた体調不良により母親を亡くし、更には父親は酒に溺れる羽目に陥ってしまう。 その父親に代わって将太が寿司職人を志した後も、せっせと親子で嫌がらせを続ける陰湿なキャラ。 嫌がらせの程度は度を越しており、巴寿司に魚を売らないよう業者に圧力をかけたり、市場の魚を買い占める(!!)のは序の口。 笹木自身は職人ではなく、笹寿司の経営者という点は、他の2人とは異なる。 働いた悪事の数々 佐治は信書隠匿罪、碧悟は傷害の教唆犯と、それなりの犯罪行為は犯していたが、笹木に比べればまだ可愛い部類である。 例えば、笹木は以下のような犯罪行為に手を染めており、時には人命にも関わる行為も働いている。 巴寿司の前にゴミをばら撒き、更に客に扮したクレーマーを送り込む(一昔前の地上げ屋と同じ手口) 巴寿司に協力する漁師たちの漁船のエンジンを片っ端からオシャカにする 寿司屋の年配親方に、腐ったカキの寿司を無理やり食わせようとする(しかも笹寿司系列店で) 将太の父親が乗った船に細工をし、転覆させる(父親は後遺症で一時手が動かせなくなる) 人間国宝の皿を割ったりアサクサノリの養殖場を燃やす職人や、地下鉄でライバルの寿司職人を突き落とす職人を雇っている 特に、将太の父は一歩間違えば人命に関わる事態であろう。 そして、残念ながら将太の寿司では警察は全く登場しない。警察という概念が無いのか、それとも笹寿司の権力に物を言わせて封殺しているのか。 これだけ執拗に嫌がらせをしているのであれば、巴寿司の買収を超えた何らかの理由があるはず、と考えるのが通常であろう。 しかし、その理由は「高校時代の将太の陽キャぶりが気に入らなかった」だけだった模様。 「貧乏人の小倅がクラスの中心になっていたのがとことん許せなかった」と、将太たちの前で吐き捨てるのである。 将太の同僚のシンコ君も「こ・・・こいつおかしいよ!!異常だよ!!」とドン引きしており、珍しくシンコ君が読者の思いを代弁してくれるシーンに仕上がっている。 だがチェーン店としては、将太に勝つために買い占めた伊勢海老を一匹丸ごと無料サービスで客に振る舞ったりと、何も知らない一般客からは優良店と思われていた説も。 寿司ネタの買い占めといい、いくら北海道の寿司チェーンとはいえ、どれだけ資金力が豊富なのだろうか。 また、小樽の祭りのちらし寿司イベントでも豪華なちらし寿司を提供していたのだが、巴寿司を狙い撃ちするかのように「イベントで最下位になった寿司屋は1年間営業停止」とかいうトンデモルールをゴリ押ししている。 イベントの成績が悪いと営業停止って・・・こ・・・こいつおかしいよ!!異常だよ!! その他、将太にお子様ランチちらし寿司の材料を買って煽ったり、新人寿司コンクールの中継がBSなため将太は見れないだろうと煽ったりと、細かい小さな嫌がらせも欠かさない。 将太もまさか、BSの未契約をイジられるとは思わなかったに違いないが、ワンチャン巴寿司がBS契約していたらちょっと面白い。 これらのシーンで将太を小馬鹿にする数々の煽り顔も必見である(佐治たち同様、上唇がめくれ上がる)。 笹木の最後 そんな笹木も、将太と佐治が繰り広げる決勝を観るうちに改心し、最終的には将太と和解を果たす。 作中でも本人が述べていたが、普通は父親を殺しかけた人間を許せるわけはないと思うのだが、関口親子は中トロ握りを振る舞うとともに、いとも簡単に笹木を許すのである。 将太に至っては、その後経営が傾いた笹寿司の立て直し(韓国進出)まで協力するのだから、お人好しにも程がある。 和解金をたんまり積んだのかな? こうして、笹木も佐治安人や紺屋碧悟とともに善人へとクラスチェンジを果たすこととなるのだが、もう少し小樽警察はちゃんと仕事をして欲しい。

漫画『将太の寿司』紺屋碧悟レビュー

『君 棄権しろよ 僕もその方が楽だからさ!!』 将太の寿司の世界では、世の中における寿司の地位が非常に高いようで、新人寿司コンクールの地方予選ですら、多くの熱狂的な観客たちが集まって盛り上がるほどの一大イベントとなっている。 そんな大事なコンクールなので、対決する職人たちも本気度が尋常ではなく、将太も寝る間を惜しんで課題の研究に勤しむほど。 更には、勝負に勝つためには手段を選ばない輩もいるのだが、その代表格となる寿司職人が「紺屋碧悟」である。 紺屋碧悟概要 政財界御用達の高級寿司割烹「碧寿司」の跡取り息子、紺屋碧悟(こうやへきご)。 この男、碧寿司で店主を務めるだけあり、寿司職人としての実力は非常に高い。 しかし甘やかされて育ったため手に負えないほど我儘になってしまい、常に自分が一番でないと気が済まない傲慢な性格の持ち主。 将太とは、新人寿司職人コンクールを含め、2回対決する。 店主なのに新人寿司職人コンクールに出てくるなよ、というごもっともな突っ込みはあると思うが、10年以上のキャリアを持つ職人、通り名を持つ職人、幻の寿司職人等が堂々と出場する大会なので、店主であろうが全く問題ないようである。 光りもの対決 最初の対決は、新人寿司職人コンクールの3回戦「光りもの対決」。 碧悟は、将太に対して「勝負が面倒だから棄権しろ」と言い放った上、将太がそれに抗うと市場中の光りものを買い占めて妨害を試みる。 笹寿司といい、将太の寿司では頻繁に市場中の魚を買い占める行為が行われるのだが、たかが1勝負のためにかけるコストが異常である。 しかも、光りものはアジ、サバ、コハダ、イワシ、サンマなど、多種に亘るはずなのに、これら全てを買い占めるって、この費用だけで店が潰れてしまう気が・・・。 しかも笹寿司と異なり、高級寿司割烹「碧寿司」では1日にせいぜい2組くらいしか客を受け付けていない。 大量の魚を客に振る舞えるキャパも無いはずなのだが、在庫をどう捌いたのだろうか。 また妨害はこれに留まらず、将太が苦労して手に入れた魚をも腐らせようと、自分の部下に試験会場の冷蔵庫の電源を切らせるという工作も行う。 碧悟はカイジに出てくる帝愛の黒服のような部下たちに妨害工作を指示しているのだが、何故一介の寿司屋にこんな部隊がいるのかは謎である。 勝負は将太が制し、更には碧悟の悪事も公となってしまうことで碧悟は寿司協会を追放されてしまう。 はじめは余裕綽々の厭味ったらしい顔が、戦況が悪くなるに従って上唇をひん剥いた怒りの顔芸に変わっていく姿が、実に見ていて楽しい。 サンマ寿司対決 『久しぶりだねえ 田舎者君・・・・!!!』 寿司協会を追放された碧悟はお店を潰してしまうが、その後日本料理の道に進んだらしく、板前へのジョブチェンジを果たす。 そしてグルメ評論家の武藤鶴栄による手引きにより、「寿司職人vs日本料理の職人」というテレビ番組で将太との再戦を果たすこととなる。 碧悟は凝りもせず、市場のサンマを買い占めるが、今回の妨害はそれだけに留まらなかった。 対決の前日、碧悟はテレビ番組の送迎車に扮した黒服のハイヤーを鳳寿司に送り込む。 ハイヤーの運転手を勤める黒服は、将太が車を降りようとした瞬間に電動ドアを閉じると、将太は左指を大ケガ。 番組本番では左手が使えなくなるというハンデを背負ってしまうこととなる。 ちなみに、現実では電動スライドドアで指を切断した事例もあるらしく、かなりシャレになってない手口である(さすがに将太の指が飛ぶことは無かった)。 ※将太の寿司では、寿司勝負にも関わらず、しばしば職人への直接攻撃が行われるパターンがある。 ↓↓これとか。 漫画『将太の寿司』大年寺三郎太レビュー 少年マガジンで連載されていた『将太の寿司』は、主人公の関口将太が、ライバルの笹寿司の嫌がらせをはじめ、様々な苦難に直面しながらも、寿司職人... 碧悟は審査する観客たちをも買収したため、一度は碧悟に勝負の軍配が上がるのだが、黒服たちは将太の勝負を諦めない姿勢を見て自分たちの悪事を反省する。 そして黒服たちはこれまでの妨害行為を白状するとともに、将太に謝罪するのである。 そのときにこれ見よがしに買収の領収書の束も見せているのだが、**買収の領収書*というパワーワードに突っ込まざるを得ない。 まさかとは思うが、買収費用を経費として税務申告するつもりだったのだろうか? 紺屋碧悟その後 将太との再戦時の悪行により日本料理界を追放され、職を失った碧悟はすっかり落ちぶれてしまうのだが、町中で目にした新人寿司職人コンクールのテレビ中継で苦戦する将太を見る。 最初は悪態をついていたものの、不利な状況でも諦めない将太の姿に心を打たれ、心を入れ替えることを決意するのである。 この漫画では、相当なクズキャラも最終的には改心し、何故かそれまでの犯罪行為も全てチャラになるという驚きの展開が多い。 紺屋碧悟はまだ報いを受けている方なのだが、これまで多数の犯罪行為を含む被害を受けていながらも、刑事告訴の素振りも見せない将太の寛大な措置には恐れ入るばかりである。 さすがに指が飛んでいたら、例え将太であっても法的処置には踏み込んでいたかもしれない。

漫画『将太の寿司』佐治安人レビュー

『オレの名を忘れるな オレは佐治安人(さじあんと)だ!!!』 『覚えとけよ オレの名は佐治安人(さじやすと)だ!!!』 (どっちだよ) バトル漫画をはじめ、人気漫画にはライバルが存在するのが多いところ、将太の寿司においても将太と切磋琢磨する「佐治安人」というキャラが存在する。 初登場時のライバルキャラというものは、登場時は完全な敵キャラという立ち位置で、次第に主人公と切磋琢磨する良いポジションに収まっていくことが多いが、佐治安人もその王道パターンである。 しかし、佐治の場合はそのバージョンアップが非常に極端、かつ名前の呼び名が安定しないのが特徴である。 ###佐治安人の概要 将太の修行先である鳳寿司の先輩職人で、将太が修行に訪れた際は5年目(まだツケ場に立っていない)というキャリア。 主要キャラのくせに、読み方が「さじやすと」なのか、「さじあんと」なのか終始不安定な人。 作中では、よもや本人の口から 「オレの名を忘れるな オレは佐治安人(さじあんと)だ!!!」とか 「覚えとけよ オレの名は佐治安人(さじやすと)だ!!!」というセリフを吐き、読者を困惑させている。 シンコ君によれば、あだ名が「サージェント」とのことだったので「さじあんと」が正しいのでは?と思わせつつ、先輩職人は大体「安(やす)」と呼んでいた。 本人ですら上述のセリフを吐くほどなので、同僚もそれぞれの呼び名に対応できるあだ名を考えていてくれたに違いない。 因みに、初期は「あんと」、中盤は「やすと」、終盤では再び「あんと」となっている。 新人寿司職人コンクールの出場を懸けた将太との勝負に負けた後は、全国の寿司屋で修行を積み、京都府代表として全国大会の決勝戦で将太との再戦を果たす、ボスキャラにまで昇華する。 初期バージョン(さじあんと) 鳳寿司では後輩のシンコ君をいびり、更に新人の将太にも終始威圧的な態度を取るという、小物臭溢れる人物であった。 そして先輩という立場にもかかわらず、仕込み等の仕事も全く教えてくれない。 「仕事は目で盗め」というのが鳳寿司のポリシーのようであったが、佐治はわざわざ酢飯の合わせ酢も自分の部屋で行ったりと、そもそも見せる気ゼロという有様であった。 しかも、暴言・暴力だけでなく、将太の恋人の手紙をこっそり破り捨てるといった陰湿な嫌がらせ(犯罪行為)も行っており、人としてなかなか終わっているキャラであった。 将太たちに向かってパワハラ発言をするときの、上唇をひん剥いた表情が実に腹立たしいことで定評がある(他の悪役も似た表情をすることが多い)。 しかし、新人寿司職人コンクールの出場枠を将太と争う中で、何か急に「実は努力家」「努力の天才」という評価を受けるようになる。 結果、将太との勝負には負けてしまうものの、後述のようなバージョンアップを果たす。 中期バージョン(さじやすと) 鳳寿司を飛び出した後は修行に明け暮れ、どんな手口を使ったのかは不明だが、京都府代表として新人寿司職人コンクールの全国大会へ出場し、予選では将太を圧倒する。 全国での修行を通じ、初期の猿顔とは似ても似つかぬ精悍な顔つきとなっており、性格も気の良い兄ちゃんキャラとなっている。 個人的には、この中期バージョンが一番バランスが取れていて好きである。 しかし、鳳寿司を出てからコンクールの京都代表になるという時系列を考えると、あまり修行期間が無かったような…。 鳳寿司にいた時点で、職人としての実力は相当なものであったのだろう。ツケ場で寿司は握ってなかったけど。 後期バージョン(さじあんと) 既に全国の寿司屋での修行を行い、バージョンアップ済の佐治であったが、更にどこかの寺で謎の座禅を行うという強化イベントがある。 なぜ座禅なのかは全くもって分からないが、容貌はガリガリに痩せ、そしてお粥の中に入った塩の粒の数を当ててしまうほどの「絶対味覚」を習得する。 中期と比べて性格もクセが強めとなっており、佐治のためにエビの鮮度を保つための水槽を持ってきた将太に対して「●すぞ」と凄んでみたり、決勝では将太に対する勝利への執念を隠さなかったりと、初期とは違うベクトルでヤバメな人へと変貌を遂げている。 とはいえ、決勝で将太に負けたときは素直に将太の勝利を讃えたりしているので、初期に比べれば大分マシである。 佐治まとめ 美味しんぼの海原雄山も、初期は暴君だったが後半になるにつれ聖人化しているのだが、そちらは話が進むにつれ徐々に変わっていく。 一方、佐治は上記イベントを通じて見た目や性格が明確に変わっており、分かりやすい2段階の変身(フリーザより1回少ない)を遂げている点が特徴である。 なお、どのバージョンでも怒りの顔芸を披露してくれる点は共通している。 最終的には鳳寿司の親方まで上り詰めた上にちゃっかり人格者ポジションに収まっているものの、修行時代に将太の彼女の手紙を破棄していた件については、ちゃんと詫びの一つでも入れてもらいたい所である。