料理が気に入らず怒っている美食家

『馬鹿どもに車を与えるなっ!!』

言わずと知れた『美味しんぼ』の人気キャラクター、海原雄山

その強烈な個性で人気を集めており、おそらく馬鹿どもの1人にカテゴライズされるであろう私もお気に入りの登場人物の一人である。

連載が終了して久しいが、今更ながら改めてこの人間を振り返ってみたい。

海原雄山とは?

美味しんぼの主人公である山岡士郎の実の親。

陶芸をはじめとする著名な芸術家である傍ら、食を追求すべく美食倶楽部を経営する。

山岡とは過去に妻の死をきっかけに親子関係を断絶していたが、最終的には和解に至る。

海原雄山の気性

連載初期は、極めて粗暴かつ傲慢。

気に入らないことがあれば、山岡をはじめとする周囲の人間に所構わず当たり散らす。

一方、自身の陶芸の師匠である唐山陶人に対にしては、一定の敬意を払う姿が見られる。

また、食に関して自身に非があれば、悪態をつきながらも負けは認めるという、意外と素直な面もある。

連載が進むにつれてその傲慢さは影を潜めていくとともに聖人化・神格化していき、しまいには「雄山が妻をDVの末に早死にさせていた」という山岡の主張も医者によって覆される展開に。

しかし、妻には日常的に何度も食事を作り直しさせていた時点で、立派なDVではなかろうか。

幼少期の士郎が皿を割ってしまった際には、「この皿一枚ほどの価値のないおまえが!」「●ね!●んで償え!」とか怒鳴っているし・・・。

「流石にその擁護は苦しすぎのでは・・・」と思ったが、医者が言うのだから仕方ない。

傍若無人エピソード

その強すぎる唯我独尊ぶりゆえ、周囲を巻き込んだ迷惑エピソードには事欠かない。

山岡のみならず、美食倶楽部の料理人など、多くの人間が多大なる被害を被っている。

その中のごく一部を紹介したい。

天ぷら職人対決

記念すべき山岡との初対決。

互いが面識の無い天ぷら職人達のうち、誰が最も美味い天ぷらを揚げられるかを当てるという謎の勝負である。

山岡は、職人の舌と掌や、職人の事前調理の様子を観察して予測していたのだが、何と雄山は持参のテープレコーダーを用意。

『このテープの天ぷらを、揚げる音が変わったと思うところで手を上げろ。』

たった一コマの中での流れるようなやり取りである。

いや、用意周到すぎない?

恐らく美食倶楽部の中川あたりに録音してもらったのだろう。

確か、この勝負のテーマも雄山が提案したはずなので、その時から「中川に録音してもらおうっと」とでも考えていたのだろうか。

結局、勝負は雄山が勝ち、ここぞとばかりに山岡を罵った。

仔牛対決

山岡と雄山は、とある飼育業者の元を訪れる。

雄山は山岡に対し、飼われている仔牛からどれか1頭を選べと言う。

山岡は仔牛を厳選し、一番状態の良さそうなものを選ぶ。

しかし、雄山はこう言い放つ。

『私はあの中からは選ばない、絶対に。』

理由は、仔牛が全部牡かつ去勢しているからだそう。

いや、あなたがこの中から選んでみろって言いましたやん!!

しかし、山岡をはじめ、その場の誰も抗議することは無い。

打ちひしがれる山岡を横目に、雄山は高らかに勝利を宣言する。

うわあっはっはっはっは!

鴨肉にわさび醤油

フランス料理屋の宴席に招かれた山岡たち。

そして、やはり雄山もこの宴席に招かれていた。

料理が運ばれてくる中、雄山はこれ聞こえがしに「フランス人は魚の食べ方を知らない、この魚なら、バターや生クリームよりも酒蒸しの方が美味い」などと言い出す。

そして周りの客も「なるほど海原先生の言われる通りだ」と雄山を持ち上げる始末。

当然、料理店のオーナーもいい顔をしない。

そんな最中、料理店自慢の鴨料理が登場。

鴨の骨髄を抽出したソースが名物で、山岡たちも絶賛する。

しかし、雄山は鴨肉をソースに絡めずサーブさせたかと思うと、悪そうな人相の側近(初期中川?)に用意させたワサビ醤油で食べ始める。

『うむ、この方がうまい』

失礼な行為は更にエスカレートし、他の招待客にまでわさび醤油を振る舞い始める始末。

そして取り巻きも同調する。

とどめを刺すかのように、上機嫌かつ大声でフランス料理を侮辱する。

・・・これはあまりに酷い。出禁ものである。

しかも、普段からわさび醤油なんて持ち歩かないと思うので、わざわざ鴨料理を罵倒するだけのために、前日からわさび醤油を準備していたのだろう。

天ぷらのカセットテープの件と言い、実に用意周到である。

ちなみにこの後、美食倶楽部の懐石料理でカツオの刺身を振る舞ったのだが、山岡にマヨネーズを使って食べられて、「こんなのは邪道だ」と怒っている。なんというダブスタ。

最終的に、怒りのあまり自分のお膳をひっくり返して「これだけ程度の低い客ばかり集ったのは初めてだ!!」「とても付き合えん、あとは勝手に食べて帰るがいい!!」と言って部屋を出ていってしまう。

最初から最後まで、雄山の素晴らしい小物っぷりを堪能できる回となっている。

その他クズエピソード

・料亭の料理にクレーム

大原社主の誘いで訪れた料亭の料理が不味くて、お膳から料理皿を払い除けて吹っ飛ばす。

大原社主は、食事を通じて山岡との仲直りを図ろうとしたのだが、雄山は「あいつ、家出する時に大事な作品全部壊したんだわ。まじ許せんわー」と取り付く島もない様子。

名言「女将を呼べっ!」が生まれたのも、この回である。


・美食倶楽部の料理人へのパワハラ1

美食倶楽部にて蕎麦を食べようとしたところ、付いてきた薬味が気に入らず、美食倶楽部の料理人の顔に薬味皿を投げつける。

皿は見事料理人の顔に命中。


・ハンバーガーとアメリカ人の悪口

ハンバーガーの事を、「味覚音痴のアメリカ人の食べるあの忌まわしいハンバーガーを!!」と罵る。

時と場所によっては、外交問題に発展しかねない過激なセリフである。


・美食倶楽部の料理人へのパワハラ2

美食倶楽部で食事を取っていると、突如厨房へ現れ「このあらいを作ったのは誰だあっ!」と咆哮。

更に、作った料理人に対し、理由も言わずクビを宣告。

せめて理由くらい言ってあげればいいのに・・・。

ちなみに、薬味皿を投げつけられた料理人と同一人物。


・幻のサバの味に屈服も、頑なに負けは認めず

サバを下魚と断じていた雄山に対し、山岡が幻のサバを提供すると、味についてはコメントせず、盛り付けに用いられていた器のデザインにケチを付け、その場を退席。

「こんな器で料理が食えるか、不愉快だっ!!」


・車内での暴言1

渋滞に巻き込まれた際、「馬鹿どもに車を与えるなっ!!」との問題発言。

隣の中川も「ははっ」と返してお茶を濁すのが精一杯。


・車内での暴言2

後部座席にて車移動中、あわや道路に飛び出した山岡を轢きそうになってしまう。

その際に中川+山岡に言い放った一言。
『野良犬の一匹や二匹ひき殺したからといって、いちいち私の車を止めるな!』(えぇ・・・)


・妻へのDV

妻の出す料理が不味いと、何度も作り直させていた。山岡と仲違いした要因となる。

なお、作中では美談に仕立て上げられる。

海原雄山まとめ

そんな傍から見る分には魅力溢れる雄山であったが、巻が進むごとに聖人モードにアップグレードされてしまい、往年の粗暴さは影を潜めてしまった。

キャラ的には、中盤辺りの、傲慢でありつつもたまの優しさを見せる辺りがバランスが取れていたかもしれない。

その辺りでは、山岡に対する歪んだ愛情も垣間見られる辺りも垣間見られ、例えばカブ対決では雄山勝利が濃厚であったにも関わらず、山岡の狼狽ぶりを見た後で「やっぱやり直し。異存ないよな。」と仕切り直しを提案するようなツンデレ場面などを楽しむことができる。

関連記事