『味噌と白菜と米の飯!日本人はなんてまずしいんだ!こんなものが、死ぬほどうまいんだからなーーっ!』
『美味しんぼ』には、山岡士郎や海原雄山、栗田ゆう子といった主要メンバーに加えて、個性的な脇役が多数登場する。
中でもアクの強い海原雄山、富井副部長、中松警部などは初期から活躍するが、敢えてここでは中期から登場するカメラマン、「近城勇」に注目してみたい。
近城の記事なんて需要ないだろ!と言われると正にその通りなのだが、それでも書きたい。
山岡達との出会い
近城は、東西新聞繋がりの仕事をきっかけに山岡たちと知り合う。
最初はグルメブームには否定的だったので、食べ物を撮影するという山岡たちからの仕事の依頼も断っていた。
野生動物、遺跡、スポーツをする人とは違い、グルメごっこには真実がないし、うまい食い物の写真を撮ることが挑戦とも思えないから、というのが断りの理由であった。
しかし、栗田たちが飛騨高山で仕入れた朴葉味噌を食べると、その旨さから、白米をかっ込みながら「うおーっ」と吠える。
そして栗田から「食べ物は絵面が地味だけど、だったら感動するような写真撮ってみるのが挑戦だろ」と煽られ、最終的には山岡達の仕事を引き受けることとする。
敢え無くモブ化
当初はストイックで頑固な側面が強く、山岡たちをはじめとする周囲に対する当たりもキツかった。
仕事の勧誘をしようとした仁木まり子も、ひどく扱いにくい男だという噂を聞いて尻ごみするほど。
仕事を共にするようになった直後は、カジキマグロの話で帝都新聞と険悪になったり、辛子明太子がまずいと言い小泉局長と喧嘩をしたりと、血気盛んなところも随所に見られた。
(グルメ嫌いという割に、結構食べ物絡みで騒動を起こしているような…)
しかし、次第に柔和な性格へと移行していき、山岡とは「山岡の旦那」と呼ぶほどの仲となる。
最終的には栗田の策略もあり、山岡と合同で結婚披露宴を催すのだが、宗教的な理由ではないので、そこは安心してもらいたい。
最初の一匹狼の雰囲気はどこへやら、気づいたら取材でも目立つ場面は少なくなり、究極&至高のメニュー対決のテーブルに賑やかしとして座っていたり、完全にモブキャラ化の波に飲まれていってしまうのである。
恋愛事情
美味しんぼでは、一応恋の話も描かれており、近城は山岡の当て馬として活躍する。
勧誘時の朴葉味噌作戦で籠絡してしまったのか、栗田に惚れてしまい、物語の途中までは団社長とともに栗田ゆう子を取り合うこととなる。
そして、近城は栗田が山岡のことを好きと知りながら、自分と栗田との仲を取り持つよう山岡に頼み込むという姑息な手段も行う。
ストイックで男臭い人じゃなかったのかな?
山岡は了承するが、その決断をしばらく後悔することとなる。
後半では栗田にプロポーズも行い、「僕と結婚してください」「邪魔するものは叩き潰す」「誰にも渡さないからね」と、聞きようによってはやや恐怖を感じる迫り方を魅せる。
一歩間違えばストーカー案件にもなりそうな言動だが、スピリッツの中では珍しく、子供にも安心して読ませられる漫画「美味しんぼ」でそういう展開は無いので、安心してもらいたい。
結局、栗田が近城になびくことは1回も無かった、と言うか全く歯牙にかけていなかった。
何気に海原雄山の専属カメラマン
仕事に対しては真摯で、例えばラグビーの試合の躍動感を写真に収めるべく、自身もフィールド外から選手を走って追いかけるほど。
また海原雄山のインタビュー時は、わざとしつこくフラッシュを焚いて撮影を続け、雄山が怒ったところで更に1枚写真を撮影。
これには、雄山の感情を剥き出しにした表情が撮るという意図があった。
一見失礼にも見えるやり方だが、雄山はその近城のプロ意識を気に入り、専属カメラマンに選んでいる。
と言うか、専属カメラマンを付けるとは、意外と雄山は写真写りを気にするタイプなのかもしれない。
美味しんぼの中では常識人寄り
登場時は「有能なカメラマンだが偏屈で扱いにくい男」という評判だったが、実は他の人ほど問題となる行動は起こしていなかったりする。
海原雄山とか富井副部長等と比べると、よっぽど常識人である(比べる対象が異常なだけかもしれない)。
仁木まり子との結婚後、離婚の危機があったりするが、富井副部長ほど突き抜けたエピソードでもない分、少し生々しい。
寧ろ、社会人的に終わっているのに家庭は奇跡的に円満な富井副部長の事例が特殊なのである。
ちなみに、美味しんぼにはもう一人のカメラマン、荒川も登場する。
こちらは一見いい人そうなのだが、カレーの作り方に妙なこだわりがあったり、サザエの調理法で奥さんと喧嘩したりと、こっちはこっちでクセの強めな人である。
ともあれ、プロカメラマンとして成功した上、二都銀行会長の孫の仁木まり子とも結婚し、子宝にも恵まれているので、かなり幸せになった人物の一人かと思う。