『この豚バラ煮込みは出来そこないだ、食べられないよ。』
言わずと知れた、 人気グルメ漫画『美味しんぼ』の主人公、山岡士郎。
海原雄山や富井副部長といった傍若無人な登場人物に囲まれ、その貢献にも関わらず不遇な扱いを受けているこの男を紹介したい。
山岡士郎の来歴
東西新聞社の文化部に所属する新聞記者であり、皆からは仕事の出来ないグータラ社員と認知されている。
ある日、会社創立100年記念の事業として、社主の肝いりで立ち上げられた「究極のメニュー」の担当者を決めるべく、急遽文化部の社員たちが料亭へ集められ、味覚テストが行われる。
そんな中、士郎は鋭敏な味覚を披露し、本人のやる気の無さとは裏腹に「究極のメニュー」の担当者として、新人の栗田ゆう子と共にメニュー作りに取り組んでいくこととなる。
山岡はかの美食家、海原雄山の息子であり、英才教育を受けていたこともあって食に関する能力の高さは折り紙付き。
雄山とは家庭での関係性の悪化から絶縁状態にあり、「至高のメニュー」を担当する雄山と対決を繰り広げていく。
キャラの変容
山岡は、初期と中期以降とで、その性格がかなり異なる。
狙ったものではないだろうが、性格が変化するという点は父親の海原雄山と共通する傾向である。
連載初期
黒スーツ+黒ネクタイと喪服のような服装で身を包み、無精髭を生やした風貌をしており、競馬新聞を広げた職場での様子も相まって、寄り付き難い雰囲気を放ったハードボイルドなキャラであった。
また、食を通じて権力者に対しても臆することなく辛辣な意見を言い放ち、会食の場を乱すことも多々あり。
しかし、最終的には持論の正しさを料理で証明することで、周りを説き伏せていく。
また、社員や友人たちが困っているときは、嫌々ながらも問題を解決してあげる一面も持ち合わせており、決して性格が悪い訳では無い。
連載中期以降
連載が進むにつれ、食への妥協を許さない姿勢は維持しつつも、次第に冗談に飛ばしたり悪ふざけをするようなシーンが増えていく。
また、周りからもイジられることが多くなっていく。
更にいつの間にか無精髭も無くなっており、彼なりに徐々に社交性を身に着けていったようである。
しかし、喪服のような服装は相変わらずである。
驚異の人脈
新聞記者であれば、取材等を通じて色々な人との繋がりがあることは理解できる。
しかし、山岡士郎の交友範囲は、職業上の理由だけでは説明できない程の広さを誇っている。
ざっと上げるだけでも、以下のようなラインナップである。
- 東西新聞社の社主をはじめとする幹部クラス
- 警察関係(複数の警部と仲良し)
- 大手百貨店、IT企業等の社長たち
- 大手銀行の会長
- 大富豪の商人
- 大富豪の華僑
- 副総理
- 人間国宝の陶芸家
- 売れっ子カメラマン
- 真打ちの落語家たち(米国人も含む)
- 横綱はじめとする角界関係者
- ジャズ界の有名プレイヤーたち
- 銀座界隈に住む浮浪者
- 日本中の人気店の凄腕料理人たち
- ラーメン三銃士
- 劇画原作者
最後の2つは置いておくとして、このラインナップはヤバすぎる。
政治、経済、国家権力、文化と、あらゆる方面での権力者と結びついているのである。
しかも、いずれも面識があるという程度の関係ではなく、悩みを共有したり、軽口も言い合えるような間柄まで踏み込んでいるのも驚きである。
連載初期のアウトローキャラからは考えもつかない人脈である。
連載も終盤にかかると、山岡はめでたく栗田ゆう子と結婚披露宴を催すのだが、(合同結婚式であったとはいえ)そこらの政治資金パーティーなど比較にならないであろう出席者たちが集まることとなる。
極めつけは、実の父親が稀代の芸術家である。
因みに、某AIに山岡の知り合いについて聞いてみると、以下のような回答が返ってきた。
由美子:山岡士郎の妻で、漫画の重要なキャラクターです。
小松:山岡士郎の同僚で、料理の腕前も高い人物です。
田中:山岡士郎の相棒で、主に料理を一緒に作る場面で登場します。
いや、こいつらは誰だ。
何だか色々なグルメ漫画の知識が合わさって、美味しんぼ上での架空の人物を生み出してしまったような気がする。
不遇な扱い
山岡は初期から一貫して無能なグータラ社員という認識を受けている。
しかし、作中取引相手との接待上のトラブルを幾つも解決しており、東西新聞社の買収騒動までも防いでいるのである。
更には社員のプライベート含む数多の問題も解撤しており、思いつくだけでも以下のような活躍を見せている。
- 大原社主の夏バテを回復
- 副部長のクビを何度も回避させる(クビにした方が良かったかもしれないが)
- 局長と息子の親子仲を修復
- 同僚の結婚(or 交際)の手助け
一応、プライベートに関してはあくまでも業務外ということで、社内での評価に結びつかないことは仕方無いが、それでも社内の活躍により会社の危機を救っているわけである。
それにも関わらず、社員たちからはボロクソに貶されたり、暴力を振るわれたりと、その功績からは考えられないような扱いを受けている。
よっぽど普段の勤務態度に問題があり、クビにならないだけでも御の字ということだろうか。
意外とモテ男
作中では「容姿に優れるわけではなく、モテない」という扱いを受けているが、全くそんな事はない。
ヒロインの栗田ゆう子をはじめ、元同僚、デザイナー、財閥の令嬢、大学生からは好意を持たれたり、学生時代に好かれていた女性も登場するが、当の本人は鈍感で全く気付かない、と、この辺りは漫画の主人公あるあるである。
結婚に至るまで山岡は栗田ゆう子と正式に交際していてはいなかったのだが、山岡が他の女性と親しくなりそうな動きがあると、東西新聞社のお局たち(田畑さんと三谷さん)に察知され、制裁を受けることが多々ある。
二人が交際しているならまだしも、そうでないのにお局たちに詰められるとは、何と理不尽なことか。
また栗田ゆう子を巡り、団社長や近城カメラマンとは恋敵(山岡本人にその認識はない)となるが、彼らはお互いに「団社長/近城カメラマン相手なら勝つ自信はあるが、山岡の旦那は強敵」と高い評価をしている。
山岡士郎まとめ
長年人気グルメ漫画の主人公を張っていただけあり、特に初期は魅力的な個性を持ったキャラクターかと思う。
また、グータラ社員との烙印は受けているものの、栗田さんと結婚し(大手新聞社でのダブルインカム!)、子宝にも恵まれ、海原雄山とも和解し・・・と、順風満帆な人生を過ごすこととなる。
これまでの彼の功績を考えればそれでも足りないくらいかもしれないが、「情は人のためならず」の諺の通り、行いが報われたと思うと救いがあるのではないかと思う。
しかし、父親もそうであるが、決して一緒にご飯を食べたい相手ではないことは間違いない(作中でも、栗田さんの作ったおにぎりや朝食に辛辣な評価をしていた)。