『酒っつうのは、昼でも、夜でも、酔っ払うのよ。昼間飲んだら酔っ払わない酒があるなら、持って来いってんだ!』
漫画には、主人公の周りを飾る脇役が欠かせない。そして、 『美味しんぼ』にもそんなクズ魅力的な脇役が数多く存在する。
今回は、その中でもひときわ異彩を放っている富井副部長に注目したい。
なお、冒頭のセリフは、酔っ払いながら自分の上司である局長に言い放ったものである。
しかも、就業時間中に。
富井副部長とは?
東西新聞社の文化部にて副部長を務めており、主人公である山岡の上司。
生まれは旧満州で、太平洋戦争の混乱の中で日本に引き上げてきた経歴を持ち、幼少時代は極貧生活を強いられるなど、実はかなりの苦労人。
当初は絵に描いたような嫌味な中間管理職であったが、明るくおっちょこちょいな性格も相まってか、(後述のエピソードからはにわかには信じ難いが)周囲からは悪いイメージは持たれていない様子。
また、上司に対するゴマすりは欠かさない。
家では恐妻家という一面もあり、奥さんの分まで家事をこなしている。
あと、漫画ではいつも変な水玉柄のネクタイを身に着けている。
奥さんからプレゼントでもされたものだろうか。
なお、物語終盤では部長代理に昇進するため、代名詞となっていた「副部長」の肩書きは消滅する。
酒乱エピソード
ここからが富井副部長の本領発揮である。
この男は、酒が入ると信じられない行為を働くのである。
上の立場の人間に暴言を吐くのは序の口であり、暴力は振るう、器物損壊はする、など、今なら迷惑系Youtuberとして有名になってしまうのでは、と思わせる行動を躊躇なくやってしまう。
さすがトミー!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる!あこがれるゥ!
その結果、社会人として、いや人としてありえないレベルの事件・騒動を起こしまくっている。現実なら、複数回は会社をクビになり、かつどこかのタイミングで書類送検となっていても全く不思議ではない。
その中から、いくつか代表的な酒乱エピソードを紹介したい。
舌禍事件
新聞業界のゴルフコンペでまぐれで優勝し、その後のパーティーで泥酔。
優勝スピーチにて、あろうことかライバルの帝都新聞の社員(最終ホールまで優勝争いをしていた人)に対し「東西新聞の企画『究極のメニュー』を真似した」「他社の企画を真似するなんて恥であるうっ!」などと暴言を吐く。
相手から「無礼者」と言い返されると、壇上から殴りかかろうとする始末。
この後記者クラブからの追放を訴えられるまでに発展するが、山岡の助力により事なきを得る。
昇進を考えていた上司に暴行
同期が昇進するとの話を聞き、それを妬んだ富井副部長。
すると社外でしこたまヤケ酒をあおったのか、泥酔姿で会社に現れたかと思うと、大声を出す。
『こんなしみったれな会社、辞めちまおう!!くけけー!』
人生この方、「くけけー」って叫ぶ人は見たことがない。
その場には小泉局長がおり、実は富井副部長が現れる前に、彼の昇進を考えていることを山岡達に話していた(未確定の人事情報を大っぴらに話すのもどうかと思うが)。
だがそんな事情を知らない富井副部長は、自分のことを評価していない(と思っていた)小泉局長に向かい、「このタコ」などと暴言を吐く。
それだけでは留まらず、局長の胸ぐらを掴んで怒鳴り散らす蛮行に及ぶ。
結果、昇進の話が流れるどころか、クビ問題にまで発展するのである。
なお、山岡の画策によりクビは免れた模様。
子牛音頭行くぞー!
居酒屋にて識者達がBSE問題について論じている中、やはり泥酔。
その後、勢い良くテーブルの上に土足で乗り上げたかと思うと、「BSEが怖くて衛星放送(BS)が見られるかってえんだ!」などと、頓珍漢なことを訴える。
更に、『子牛音頭行くぞー!』との合図を皮切りに、「♫モォーモォー♫」と叫びながらテーブル上の料理を辺り一面に吹っ飛ばす。当然、料理は飛び散るし、お皿も割れる。
こんなこと、酒を覚え始めた学生でもまずやらない行為だろう。
というか、子牛音頭って何だろう。
料理を引っ掛けられた識者達からは反感を買った挙げ句、その様子を見ていた帝都新聞の記者に記事にされてしまい大事に発展する。
史上最低の肴
またしても同期が部長に昇進して落ち込む富井副部長。
そんな中、富井副部長がいまだに昇進できない理由が「酒癖の悪さ」であることを小泉局長から聞き出した山岡(聞くまでもない)。
そしてそれを山岡から聞いた富井副部長は、断酒を決意するのである。
どうでも良いが、この会社の人事情報の筒抜け具合は酷すぎる。
そんな富井副部長の様子に心を打たれた山岡は、富井副部長の断酒を手助けすべく、文化部の社内企画「絶対に酒の肴にならない食べ物自慢大会」を開催する。
参加者たちがテーマに沿った食べ物を紹介し、会は順調に盛り上がりを見せたかに思えたが、やはりここでも富井副部長は日本酒片手に出来上がってしまう。
『酒に肴なんざいるもんけぇ。』
自分のために開いてくれた会の趣旨を根底から否定する発言である。
その後、いつものように(!)大原社主と小泉局長の口に日本酒の徳利を押し付け、無理やり一気飲みさせる暴挙に出てしまう。
その他の失態
上記以外にも活躍の場を挙げればキリが無いが、参考までに一端を紹介しておきたい。
酒絡みは言うまでもなく、酒以外でもまあまあな事をやらかしている。
- タイ人女性記者の前でタイ米を「家畜の餌」などとこき下ろし、あわや国際問題に発展しかける
- 酔っ払ってぶつかってしまった相手のベトナム人をスリと勘違いして交番に突き出す
- 接待相手の韓国のお偉いさんがスピーチしている最中、目の前でタバコをふかし始める
- その韓国のお偉いさんがキムチを食べ「辛過ぎる」と感想を言うと、『へ?辛すぎる?キムチって辛いものでしょう?』からのタバコスパー、酒をグビグビ、の連続失礼コンボ炸裂(信じられないが、山岡に指摘されるまで、大原社主達も含め機嫌を損ねた原因が分からなかった)
- 人事部長の顔めがけ、口からコーヒーを噴射(これは山岡にも責任あり)
- 電話をかけてきた作家先生の声が聞き取れず、失礼過ぎる発言で対応(組んだ足を机に乗せながら電話をするのも高ポイント)
- 黒酢詐欺の片棒を担ぐ(そもそも就業規則に引っかかるのでは)
- かき氷の食べ過ぎで病院へ搬送
- ケーキバイキングで食べ過ぎでぶっ倒れ、店内のケーキやテーブルを損壊
- 法事でお銚子2本を同時にラッパ飲みした挙げ句、帝都に勤める親戚に向かって飛びかかる
振り返ってみると、何故かアジア系の人々に失礼な行為を働いていたことが良く分かる。
それでもエリートな富井副部長
この記事を書くために富井副部長のことを調べていたら、Googleの検索履歴が富井副部長で埋め尽くされてしまった。
検索の中で、AIによる富井副部長の概要も出てきたので、以下に紹介する。
『富井副部長の年収は、約1800万円と推定されています。これは、日本第二位の部数の大手新聞社の本社勤務の管理職の年収の目安です』
作中で富井副部長は「しみったれな会社」と文句を言っていたが、立派な勝ち組企業であることが伺える。
真面目に働いている普通の会社員がこんな年収情報を見せられたら、勤労意欲はさぞ低下するに違いない。
しかも、最後の方では部長代理への出世を果たしている。この会社の人事評価制度はどうなっているのだろうか。
こんな富井副部長だが、アニメ版の声優の声が副部長のキャラ・見た目とどハマりしているので、是非興味のある方は見てみて欲しい。くけけー!