審査員が自分の寿司から試食を始めようとしている様子を見て、がっくりうなだれる寿司職人

 『それではまず奥万倉君のお寿司からいただいてみましょう』

上の負けフラグでお馴染み、『将太の寿司』における主人公のライバルの一人、『奥万倉新一』を紹介したい。

主人公である関口将太は、修行先の鳳寿司を代表して新人寿司職人コンクールに出場するのだが、その時最初に対戦相手として立ちはだかるのが、奥万倉新一である。

奥万倉の来歴

新人寿司職人コンクールに出場する包丁名人であり、落ち着いた雰囲気の好青年。

幼少期に両親と死別し、その後養子になるも、里親が幼くして亡くなった息子の面影を自分に重ねていたことにショックを受けてしまう。

その後家出をし、自暴自棄の末に暴走族になってしまうが、「磯銀」の親方に身を挺して救われたことで改心し、寿司職人の道に入ることとなる。

(この時、親方は鉄パイプによる背中への殴打をはじめ、敵対勢力にボコボコにされている)

将太との最初の勝負では、包丁の技術もさることながら、味の点にまで配慮していた点が評価され、見事勝ちを収めるのだが⋯。

包丁捌きが自慢。寿司ネタを空中に投げたかと思うと、物凄い勢いで包丁を振り回し、見事な飾り包丁を入れてしまうほど。

寿司屋のカウンターでそんな動きをやられたら、一緒に働いている人は危なくてしょうがないのではないか。

まあ、海外で受けそうなパフォーマンスである。

聖人奥万倉

非行に走った経歴を持ちながら、将太との絡みにおいては人間として非常にできた振る舞いを見せる。

一度人生で辛い思いをしている分、人の痛みが分かるのだろうか。

寿司職人コンクールの話になるが、出場者達は、出場にあたってその意気込みを皆の前でスピーチすることとなる。

不運にも、将太はスピーチ前にコーヒーを飲んでいたスタッフとぶつかり、服を汚してしまう。

この際、コーヒーの汚れを隠すようジャケットを貸してくれたのが奥万倉(この時が初登場)である。

その後、自身の勤める寿司屋(磯銀)までジャケットを返しに来た将太に剥きリンゴを振る舞う。

この時、対戦相手という関係となるにも関わらず、将太に自身の包丁捌きを惜しみなく披露し、将太に包丁技術を学ぶきっかけを与える。

更に、コンクールが進んでいく中でも将太に対して激励の言葉をかけている。

また別の話になるが、コンクールの対戦相手が妹の手術代を捻出するお金に困っていたとき、何と自らのバイクを売ってまで金策に走った(暴走族時代の改造車か?)。

しかも、45万という高値で売れている。

残念ながら、東京大会決勝では将太に敗北することとなるが、恨み節を吐く様子も全く見られない。

奥万倉の負けフラグ

将太との初対戦では見事勝利を収めるものの、最後の四つ巴での決勝戦では、尽く引き立て役になってしまう。

将太の寿司も料理漫画でありがちな「最初に料理を出した方が負ける法則」に従うこととなのだが、何故か審査員は奥万倉の寿司を最初に試食したがる傾向にある。

そして、「包丁技術が素晴らしい」「基本がしっかりしている」などと取ってつけたような評価をされつつ、後出しの寿司の咬ませ犬にされるパターンになってしまう。

『それではまず…奥万倉君の寿司からだ』
『まず一人目 奥万倉新一君の寿司は⋯煮ハマグリであります!!』
『まず最初は奥万倉新一君 トリ貝による花菖蒲の寿司です!!』
『それではまず奥万倉君のお寿司からいただいてみましょう』

⋯奥万倉も、内心「またこのパターンかよ・・・」と思っていたに違いない。

致命的なのが、一番最後に審査されることが殆ど無かったことだろう。

決勝では各自が計10品を出したのだが、奥万倉の寿司はうち2回しか最後に食べられなかったのである。

包丁の技術はピカイチなのだが、強烈な先出しデバフがかかってしまう。

なお、1番の評価を得た2回のうち1つはハマチだったのだが(もう1つはイカ)、それは共に職人を目指そうとした亡き後輩・修一の形見である左利き用の包丁を使ったものによる評価だった。

・・・故人の包丁を常に携帯しているのだろうか。

奥万倉はいい人だけど不遇

というわけで、漫画中においてはクズ職人達がひしめく中、常識人として将太と対戦したこの人物は、一種の清涼剤となっていたと思われる。

しかし、1回ぐらい最初に食べた奥万倉の寿司が最高の評価を得るシーンを観たかったものである。

(将太の寿司において、後攻側が勝利を収めるケースは2割を切るらしい)

なお寿司職人コンクールの全国大会では、もっと上の包丁技術を持つ職人が出てくるあたりも、処遇の不遇さに拍車をかけている。

「柏手はなしか・・・」

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